麻原三女・松本麗華氏の月刊『創』7 月号における虚偽の記載に関して――『止まった時計』に関連して


 先月5月、ひかりの輪では、麻原三女・松本麗華氏の著作『止まった時計』の虚偽の記載について指摘を行いました。

 それに関連して、今月発売された月刊『創』7月号の麗華氏の発言の中に、以前、社会的に問題となった「麻原家族の絵画使用料の問題」についても、事実に反する部分がありましたので、それについて説明しておきたいと思います。

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【1】上祐代表と、『創』読者とのFBでの質疑応答
   〈絵画使用料以外の部分に関して〉
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 その前に、最近、その『創』の麗華氏の記事を読んだ読者の方から、上祐代表に、フェイスブック上でご質問がありました。それは、麗華氏の『創』の発言を見ると、上祐さんや野田さんの話のどちらが事実関係を正確に語っているのか、ますますわからなくなるので、回答して欲しいというご質問でした。
 まずこちらからご紹介します。

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◎質問 
 「松本麗華氏と、上祐さんや野田成人さんのどちらが事実なのでしょうか?


 自分としては、個々人の良識に委ねたかったのですが、下記の質問に回答して欲しいと言う人がいるので、お答えしました。

【読者からの質問】

 昨日発売になった「月刊創」15年7月号で、著者の松本麗華さん(麻原の三女)が、後日談の手記を書いてます。
 そもそも『止まった時計』の内容にたいして、上祐史浩さんの「ひかりの輪」や元アレフ代表の野田成人さんらが、虚偽の事実が書かれているとブログで公表していますが、それにたいして部分的に反論してます。

「もっとも批判が多かったのは、元教団関係者で組織的な活動をしている人々からである。予想通りと言えば、予想通り。事件前のことは父に、それ以降のことはわたしの責任にしてきた人たちにとって、わたしはわかままで凶暴な、何をおこなってもおかしくない「三女アーチャリー」であり続ける必要があるのだろう。

 わたしは、人を批判すれば生きていける世界ではなく、それぞれが自分なりに生きていける世界になることを願っている。わたしを含めて、オウムに関わった人々の時計が動き始めたら嬉しい。」(月刊創2015年7月号 104-105p)

 また、この手記では、新たに2000年からアレフが松本家に対して生活援助を始めた経緯を説明していますが、こうなるともうどっちが事実関係を正確に語ってるのか、ますますわからなくなります。この「創」の手記にたいする上祐さん野田さんの反応をお待ちしてます。


【上祐の回答】

 どちらが正しいかは、こうした意見が対立する場合に、この社会で、私たちが尊重すべきとされている証拠の質と量で判断するということではないでしょうか。

 そこで、ひかりの輪は、証拠として、

1.私だけではなく、三女を実体験した、
  他の多くの「ひかりの輪」のスタッフの証言
2.「ひかりの輪」とは利害関係がない、元アレフ幹部の野田氏、村岡氏の証言、
3.読売新聞の報道した、警視庁の捜査結果(私が警視庁から聞いた情報も)
4.公安調査庁の主張(公表されているものと観察処分の内部資料)
5.麻原の説法や獄中メッセージ(これは物証だと思います)

などを提供しており、しかも、

6.「ひかりの輪」の見解の事実関係についての大枠を、外部者である滝本太郎弁護士も認めており、
7.三女の著作の虚偽を指摘した、「週刊新潮」・「月刊宝島」の記事でも引用された

などの事実があります(とりあえず四女の証言は排除しておきます)。

 また、彼女の主張は、

1.事件は麻原ではなく幹部のせい、
2.事件後の教団を主導したのは家族ではなく幹部である

 というものですから、双方とも、麻原とその家族が教団を主導したという点が最大の特徴です。

 これは、オウム教団の通説に反するものですが、一連の事件が信者にとって絶対とされた麻原が主導したことは、

1.過去の無数の裁判における、ほとんど総ての幹部の証言が
  一致を見ていること
2.麻原が殺人を肯定している多数の講話や、幹部との会話の
  録音という物証があること(例えば、NHKは、麻原が戦闘を
  正当化する考えに幹部を誘導している録音テープを報道し
  たことがあります)。

などから、合理的に判断して明らかだと思います。

 一方、三女は、1995年の事件の際に、わずか11歳にすぎず、その彼女が事件を麻原ではなく、幹部が主導したと主張しても、証拠としてはあまりに信頼性が無いと思います。
 よって、通説どおり、麻原とその家族が主導する教団に対して、麻原に強く愛着している三女が、麻原と自分を守るために、麻原とその家族が主導していない教団と言う虚構を主張していることが容易に推察されるのではないでしょうか。

 私は、彼女が、司法制度を最終的な解決手段とする法治主義の日本社会の中で生きていくのであれば、今後、多くの裁判、証言、物証に基づいて結論された、絶対的な立場に基づいて麻原が主導した事件であったことは、素直に認めることが必要だと思います。

 そして、「多くの人が証拠を持ってなんと言おうと、自分の主張が正しい」という三女の言動は、ある意味で、麻原そのものです。そして、それが、私たちが昔から知る三女なのです。

 すなわち、今の三女のあり方が、例えば、野田成人氏などが非常に激しく「全く変わっていない」と主張する原因になっています。野田氏も、三女のためを思ってブログの記事を書いていると思います。

 そこで、もうそろそろ、「根拠は度外視して三女を信じたい」と思う人以外は、三女のために、なぜ三女が、無理な嘘をついているのかの原因を考えてあげるべき段階ではないでしょうか。
 私が推察するところでは、原因である可能性は、2つほどあると思います。

(1)被害妄想の可能性?


 一つ目の可能性は、「教団は社会に弾圧されている」と考えた父親の被害妄想と同じ現象であり、今回は「今や社会に加えて元幹部・アレフが自分たちを弾圧している」という被害妄想に、もし陥っているとすれば、なんとも言いようがありません。
 子供の頃から、あの教祖と教団で生きてきましたから、周囲は皆悪であって自分たちを弾圧する中で自分たちだけが正しいという「迫害の被害妄想に陥る教祖人格」というものが、子供の頃から染み付いている可能性があります。

 なお、この責任は、自分の子供を「神の子」と位置づけた麻原に加え、その麻原の絶対的な指示の結果として余儀なくされたとはいえ、三女らを神の子として扱った、私たち当時の弟子たちの罪でもあります。すなわち、自己の血を含めて、自分を絶対化したのが、麻原の教えの本質であったのです。

(2)意図して嘘をついている可能性

 二つ目の原因の可能性は、被害妄想ではなく、父親への異常な愛着と自己保全の結果として、意図して嘘をついていることです。実際に、彼女は、教団への関与を認めれば、法的な責任さえ追及されかねません。
 例えば、教団に関与していないとして、昨年、公安調査庁に損害賠償を求める裁判を起こしていますから、今更それを覆せば、嘘によって賠償金を取ろうとした詐欺未遂罪に問われる可能性もあります。また、かつての入学を拒否された際の裁判も同じ構造です。

 三女のためにも、皆さんの議論が、次の段階に行くことを願っています。
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 このファイスブックの質疑応答を読んでいただいてから、以下の虚偽の事実関係をお読みいただくと、より構造がわかりやすくなるかと思います。


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【2】誰が本当のことを言っているのか?
   記憶の塗り替えの可能性
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 麗華氏の発言に関連して、興味深い事例として、「記憶の塗り替え」という検討も必要かもしれません。最近、麗華氏・次女・四女の3人に起こったことがあります。
 麗華氏の『止まった時計』について妹の四女は「嘘ばかり」とマスコミで批判し、その後、麗華氏に続き、麗華氏と仲の良い姉の次女がブログを開設し、四女の問題を掲載。すると四女が反論を書き込み、次女がさらに反論。
 その中で、次女は、「(四女が)意図的に嘘をついているのか、無意識的に記憶を塗り替えているのかをずっと考えて続けてきた」と述べています。
 このような事例から、記憶の塗り替えの可能性について考察した、上祐代表のブログ記事をご紹介します。

>>「心の解放・悟りの哲学 第4回 記憶の塗り替え、真の自分を知る③



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【3】麻原三女・松本麗華氏の月刊『創』7月号
   における虚偽の記載
   「麻原家族の絵画使用料の問題」について
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 『創』の麗華氏の発言によると、麻原家族の絵画使料の問題については、著作の中では、自身の人生の物語ではなく自分とは関係がないとして書かなかったものの、その点を読者に改めて問われ、同月刊誌上で、それに答えたとあります。

 この問題は、2006年に報道などで、「アレフ教団が麻原家族に多額の経済援助をしている」として批判を受けた問題です。
 その経済援助は、2006年からではなく、その数年前から行れていたのですが、2006年に発覚した経緯は、その前後に、三女に近い男性信者に関する容疑で、三女らの自宅が家宅捜査を受けたことが関係していました。

 まず、麗華氏の『創』での記載を確認しながら、事実について説明していきたいと思います。


1 松本麗華氏の『創』の発言の具体的な虚偽の内容

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(月刊『創』7月号「オウム麻原もと教祖の三女 独占手記 松本麗華として生きたくて」 p101~103)

「2006年6月ごろ、わたしたち家族に「絵画使用料」という名目で団体が資金援助をしているのではないかと、マスコミが騒ぎ立てたことがありました。

 契約締結時にアレフ代表だった上祐史浩さんもこの絵画使用料について、月刊『創』(創出版)2007年4月号で、
「働くに働けない、ほとんど未亡人に近い知子さんに、子どもが六人にいて、(長女は別居)、という事情を考えると、同道とは支援できないけれど、こういう理由なら、後から公になっても理解をえられるんじゃないかと思って、月何十万円かを送ること契約をしたんです。形式的には知子さんが描いた絵画使用量とかにしていましたが、本質的には生活援助でした」
と述べています。

 果たして、真実はどうだったのでしょうか。

 2000年2月4日にアレフが設立されたとき、上祐さんは父の写真を使うのをやめ、母が画いたシヴァ神の絵を本尊として使うことにしたようです。絵画使用料の「絵画」とは、母が描いたこの絵のことです。母が画いた絵は次姉が大切に保管していました。
 しかし、わたしと一緒に彼女が旭村の事件で拘留されているときに、ある正悟師が、「(次姉)の許可を取った」と嘘をつき、勝手に持ち出してしまったのです。持ち出された絵は撮影されて、多数印刷され、本尊として道場の祭壇に飾られたり団体の人たちに配布されたりしました。

 母は、自分の描いた絵のことが気になっていたのか、釈放後すぐに、次姉に対し、「あの絵はどこ? 恥ずかしいから捨てる。持ってきて」と言いました。この「絵画」が使用されていることを母も知らなかったようです。自分の絵が複製され、団体に出回っていることを知ると、「全部回収させて!全部破棄させて!」と叫んだといいます。
 母は、法的手段を使っても回収を図りたいという意向で、「とにかく絵を回収させて。勝手に使っているなんてひどい!ずっと捨てるつもりだったのに!」と、言っていました。

 団体を法的に訴えてでも、絵の処分をさせるということを母が強く主張したため、わたしたちは慌てました。団体が勝手に母の絵を盗り、複製して配布したことについて、怒りはありましたが、法的に争うことはしたくありませんでした。特に、絵の複製に関係のない人が困るのは嫌だという気持ちがありました。いきなり裁判となれば、団体の事情を知らない多くの人たちが困ってしまうのではないだろうかとも考えました。

 そこで、わたしたちは弁護士さんたちに相談し、勝手に使用されている絵画の使用料を、正式に団体と契約し対価を支払わせたらよいのではないか、というアドバイスをもらいました。母は「契約なんてどうでもいい」となかなか納得しませんでしたが、法的手段をとった場合、余計に世間の目を引く可能性がありました。

 「もし、勝手に使われたことを訴えたら、それはそれでマスコミにも注目されてしまう。恥ずかしいとお母さんが思っている絵が今よりも有名になってしまう、何百、何千と複製されているものだから、もう隠しておくことはできないと思う。それならば、あきらめて、悔しいと思うけど、お金をもらうという方法で折り合いをつけたらどうかな」と言ったところ、母は悔しそうではありましたが、納得してくれました。

上祐さんも「使用料を支払うから引き続き使用させてもらいたい」と強く要望したため、契約が正式に結ばれることになりました。2002年の12月のことです。
 この契約は、弁護士の先生を交えて、母と団体が契約書を取り交わした正式な契約であり、内容も法的に正当なものです。
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 以上が、麗華氏の『創』7月号での「絵画使用料」についての発言部分です。
 しかし、この主張は、様々な点から、全く不合理で、事実に反しています。その理由を以下に述べます。


(1)麻原の家族が「使うな」と言えば教団は絶対に使えない

 第1に、教団の中で、麻原の家族は、麻原によって「上祐ら幹部信者を上回った最高権威」と位置づけられていることは、すでに以前の記事で説明したとおりです。よって、もし、麻原の家族が、「シヴァ神の写真を使うな」と一言上祐らに指示すれば、教団は絶対に使えないという立場にありました。

 当時のその権威の絶対性は、以前の記事で説明した通り、実際に2003年には、当時信者の中のトップで教団の代表であった上祐が、麻原家族の指示によって、教団活動から外され幽閉されたという事実さえあるほどです。

 上祐は2005年前後から家族に反抗を始め、2007年に脱会するに至りますが、「絵画使用料」の話は、2002年の時点であり、依然として上祐の中では、麻原と麻原の家族に対する帰依・信仰が残っていた時期のことです。

(2)麻原家族の反対を押し切り、妻のシヴァ神の絵を使う必要性はない


 第2に、オウム真理教及びアレフが用いたシヴァ神(正確には「シヴァ大神」)の絵画は複数あり、麻原の妻の絵は、その一つにすぎないものでした。ですから、アレフ教団として、妻の絵を使わなければならない絶対的な必要性はありませんでした。

 多くの方がテレビなどで、オウム真理教総本部道場に設置されている「シヴァ神の絵」をご覧になったことがおありかと思われますが、そこで映っていた絵は、妻の描いたものではなく、ある女性の弟子が描いたものです(NHKの特番でモデルとなった幹部信者)。そして、その妻が描いた絵ではないシヴァ神の絵を、アレフ教団も使っていました。

 このことから、仮に、家族の要請があった際に、それに抵抗しなければならない理由はないということがおわかりいただけると思います。

(3)教団では、弟子に著作権の権利は誰にもなかった


 第3に、オウム真理教では、妻や上祐を含め、弟子たちが、自分の書いた本や絵画に「著作権」などを主張することは一切なく、オウム真理教時代に、「著作権料」を受け取ったことも一切ありません。

 というのは、麻原の説いた「極限の布施」という教えがあり、弟子たちは、自分の財産は、総て教団(宗教法人オウム真理教)に布施するという考えだったからです。

 より正確に言えば、弟子たちは、自分が本や絵を書いたとしても、それは、自分たちのためではなく、教団のために書いたという理解であって、著作権の法律概念で言えば、「個人の著作物」ではなく、いわゆる「法人著作物」ということになるのかもしれません。

 それは、麻原自身でさえも実践していたもので、そのことを麻原は公の場で明確に認めています(例えば、破防法弁明手続きの際の麻原の発言の中に、「私は一文無し」というものがありました)。

 また、先ほど述べたシヴァ神の絵画を描いた幹部信者に対しても、教団は一切使用料などは払っていませんでした。上祐も、オウム真理教時代に自身の著作や写真集がありましたが、一切お金を受け取っていません。

 よって、妻だけに、しかも、たった一つの絵画に対して、毎月40万円、毎年480万ものお金を払うわけがないことがおわかりいただけると思います。

(4)妻のシヴァ神の絵は、すでに多数に配布・使用されていた

 第4に、妻のシヴァ神の絵は、すでに1986年前後から、オウム真理教の前身団体の「オウム神仙の会」に入会した者に配布されており、上祐らも受け取っているものです。

 こうして、妻が書いた絵は、もともとこのように広く配布され使用されていた絵画ですから、それを今さら使うなという話になるということ自体が、不合理だということもおわかりいただけると思います。

 なお、当時上祐らがいた時のアレフは、麻原の写真を使うことを控えていたので、その代わりに、シヴァ神の写真を使うことが多くなったということは事実です。
 そして、以上のことは、オウム真理教の幹部であれば、誰もが知っている周知の事実です。



2 上祐が実際に経験した「絵画使用料」についての証言

 では、実際に起こったことは何であるかについて、当時のアレフの代表であり、この件で、麻原の妻と直接話をしていた上祐に確認したところ、以下の返答がありました。

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(1)麻原の妻と直接会い、決まった話

麻原の妻(松本明香里(当時知子)氏)が、2002年の末に出所してきた際に、私が直接彼女と会ったところ、今後の彼女の生活費として、40万ほど必要であるという話になり、それを教団が提供することとし、その名目を「絵画使用料」とした。

(2)「毎月40万」は、麻原の妻子の生活費として聞いた額


 毎月40万という数字は、妻から、だいたいの必要な生活費として聞いたものである。一般の人から見れば、多すぎると思われるだろうし、これが公になった2006年に、そのような批判があった

 しかし、当時の自分は、「40万」という額が妥当なのかどうかは、あまり考えなかった。というか、考える立場になかったという方が正しいかもしれない。というのは、教団にとって、相手は教祖の家族であるからだ。
 ただし、彼女が外部で就労することは不可能であり、家賃も払わなければならないことは知っていた。

 よって、それは、本当の意味での絵画使用料ではない。仮に、絵画使用料であるとするならば、私と妻の間で、なぜ「毎月40万」が妥当なのかについて交渉があったはずだが、そんな話は一切無い。

 普通、ある絵画を複製して教団施設や会員に配布するとするならば、その使用法や複製の数に応じて料金が変わるものだろう。
 また毎月の支払いにする理由も無い。「毎月40万」とは、それが毎月の生活費として出てきた数字であるからにほかならない。

 三女の記載を見ても、この点は全く説明されていないが、実際に、そんな話は無かったからである。

(3)生活費の名目を「絵画使用料」とした理由


 なぜ、単純な経済援助(贈与)とするのではなく、絵画使用料としたかというと、仮にこの事実が社会に知られた時に、教団が麻原の家族に布施をしているとか、家族は教団からの布施を受けている、となれば、社会的に批判される可能性があるからである。

 その当時から、家族は、公には「教団に関与しない」と主張していた。妻もそうであった。にもかかわらず、多額のお金を受け取っていることが知られた場合、援助=贈与=お布施であるというよりも、「絵画使用料の支払い」とする方が多少なりとも、聞こえが良いということだった。

(4)契約書作成時含め、麻原家族の弁護士とは会っていない


 三女の記載があいまいなために、読者が誤解するといけないので加えるが、私は、麻原の家族の弁護士とは、一度も会っていない。今まで一度も面識がない。私は、母親との話をしただけである。

 契約書の作成は、私と妻が同席した場では作成されていないと記憶している。当時の教団の経理担当の中堅幹部が、当時アレフの代表だった私と、母親の間を行き来する形で作成したと思う。

(5)「絵画使用料」を巡って麻原家族と対立


 2006年、三女に近い信者に対して、おそらく税法に関する家宅捜索があったと思う。その前後に、マスコミに、絵画使用料名目で、40万ものお金が支払われているということが、批判的に報道された。

 この2006年の時点では、私を中心としたグループ(いわゆる上祐派、代表派)と、家族を中心としたグループ(いわゆるA派、正統派)に、既にアレフは分裂していており、批判報道を受けて、私たちのグループは、彼らのグループに、これ以上経済援助を続けることを止めるようにと主張し、彼らと対立した。

 しかし、社会の批判を受けて、彼らも、それを見直すことを検討するという発表をしたことがあるようだ(最終的にしたかはわからない。しなかったのではないか)。これは、このお金の本質が、「教団信者の教祖家族に対する尊重」を土台としたものであって、実質上お布施に近い面を持った、経済援助であって、本当の意味での絵画使用料ではなく、それにしては高すぎるということを彼らも承知していたからだろう。
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●ウィキペディアの記載

 なお、上記の上祐の説明は、ウィキペディアが、当時の上祐の発言に加えて、当時の警察捜査に基づく報道を含めて、以下の記載をしています。

「松本知子

 出所後は教団に戻っておらず、2006年半ばまでは教団との関わりは薄いと見られていた。
 ところが、2006年7月20日、アーレフ信者の容疑にかかわる家宅捜索の報道[※4]を通じて、松本知子と三女を中心として松本家が信者からの資金援助を受けていたことが明らかとなり、(中略)こうしたなか、教団が2002年12月以来松本家に「松本知子作の絵画の使用料」を名目として継続的に資金提供してきたことまで報じられた。

 こうした経緯を経て、2006年9月20日、教団が契約に基づいて2002年12月以来松本家に月40万円を絵画の使用料として支払ってきたことを、分裂状態の反代表派に属するアーレフ広報部、上祐派広報部の双方がともに認める見解を発表した[※6]。
 以後の支払いを打ち切るか継続するかについては、両派で意見が対立し合意に達しなかったため、契約は継続されているという。

 なお、上祐史浩は2007年3月発表のインタビュー[※7]において、絵画の使用料契約が当初から実質的に生活援助であったことや、その後信者から松本家への資金提供の流れがあったことを認め、また反代表派の信者が松本知子を含む松本家の人々と個人的接触をしてその意向が教団に反映される、といった形で松本家が実質的に教団に影響を与えていると述べ、四女の告発を事実として認めている。」

 [※4]  『読売新聞』2006年7月20日。
 [※6]  『朝日新聞』2006年9月21日など各紙報道。
 [※7]  「アーレフ(旧オウム)分裂!上祐史浩代表独占直撃!」
      『創』2007年4月号、創編集部。

(ウィキペディア 「松本知子」)
【参考資料】 オウム・松本被告の妻と三女宅など捜索
(上記ウィキ[※4])

 オウム真理教の松本智津夫被告(51)の家族の側近信者の男女2人が、脱税目的で銀行口座を開設し、銀行から預金通帳をだましとったとして、警視庁公安部は20日午前、茨城県龍ヶ崎市内にある松本被告の妻(47)の自宅や埼玉県越谷市内にある同被告の三女(23)の自宅など数か所を詐欺容疑の関連先として捜索した。
 調べによると、側近信者の女(35)は2002年4月ごろ、コンピューターソフト開発事業を営む側近信者の男(35)と共謀し、この男に雇用されている実態がないのに、給与の支払いを受けると偽って、都市銀行支店で口座を開設し、預金通帳をだまし取った疑い。
 公安部は、給与を支払うよう偽装することで、男の個人事業所得を圧縮し、所得税を免れる目的もあったとみている。
(2006年7月20日11時19分 読売新聞)

3 松本麗華氏についての上祐史浩の証言

 なお、麗華氏が言う通り、この絵画使用料は、主に麻原の妻のための援助であって、麗華氏のためのものではありません。ただし、麗華氏が自分の生活のために、信者の布施を受けていないかというと、それは全く別の話です。

 この点に関して、上祐は以下のように述べています。

     --------------------
(1)私が知る限りでは(私がアレフにいた時は)、三女は、形式上は自身と共に脱会した信者のグループを有しており、彼女と同じマンションに住んでいた信者もいた。彼らは、三女らが教団内にいた時に、家族のお世話とか警備を担当した者だったと思う。

(2)そして、その信者の中には、外部に就労している信者もおり(主に男性信者)、三女は、彼(ら)の布施を受けて生活していた。

 私は三女から直接、

 「(彼らが)働かなくなったら(自分の生活が)困る」 
 「私には財徳(お金を得る人徳)があり、一千万円を持っている」

などと聞いたことがある。
    --------------------

 そして、上祐の証言は、下記にウィキペディアが記載しているように、公安当局の見解と一致しています。さらには、麻原家族から家出をした四女が発刊した著作『なぜ私は麻原の娘に生まれてしまったのか』の中でも、麗華氏ら家族のお金の問題に関して、同じ趣旨の告発があります。

「2007年3月20日の報道[※8]によると、教団元信者の男性から松本家の子ども4人が住居提供を受け、海外旅行や私立学校への入学などの大きな出費をする一方で収入の裏付けとなる勤労実態がないことから、公安当局は男性が1000万円以上になる生活費を丸抱えしており、男性が隠れ信者の可能性があるとみているという。

 また、アーレフ広報部が生活支援については否定する一方、以前から報じられている松本知子への絵画使用料については認め、見直しを含めた検討をおこなっているとしていると報じている。」

[※8]「麻原妻子に年間1500万円 オウムや元信者、生活費など支援」『産経新聞』2007年3月20日。


4 麗華氏が虚偽の主張をする原因は?

 さて、麗華氏が、記憶が混乱しているのではなく、もしも、意図して虚偽の主張をしているとするならば、その原因として推察されることがあります。

 第一に、社会的な体裁の問題です。
 前に述べた通り、そもそも、これまで麻原の家族は、実際には教団に関与しながら、公には、一貫して教団への関与を否定してきました。それが多額のお布施を受けていたとなれば、絵画使用料とする場合よりも、教団への関与がより疑われることになります。

 第二に、法的な問題です。
 仮に、教団への関与が明るみになると、法的な問題にも関係します。これはすでに前回の記事で説明したとおり、麗華氏らは、実際には教団に関与しながら、「教団には関与していない」として、入学を拒否された件で、損害賠償請求の裁判に勝訴して賠償金を得たことがあり、警視庁に問題視されたことがあります。

 また、麗華氏は、昨年も、公安調査庁が自分を教団の役職員と認定したことについて、事実に反するとして損害賠償請求を行っていますが、仮に、実際には教団に関与しているということになれば、虚偽の主張で損害賠償金を受け取ろうとしていることになり、法的な問題となります。

 税法上の問題も生じる可能性があります。

 この40万が、実質的に、絵画使用料ではなく、経済援助であるならば、毎月40万、年間480万の贈与を受けたことになりますから、贈与税を支払わなければならなかったことになります。
 ただし、絵画使用料として受け取れば、所得税を納めることになりますから、その所得税を納めていないとか、社会的な体裁とは別に、税を不当に減らそうという意図があったことはないと思います(すなわち、贈与税と所得税のどちらが高くなるかもわかりません)。
 なお、この問題が発覚した2006年には、麗華氏に近い信者に対する容疑で、麗華氏と、麻原妻宅が家宅捜索を受けていますが、その容疑は、所得税に関するものでした。

 また、「著作権侵害」の問題があります。
 現在、麻原の家族が裏から支配するアレフは、被害者団体(オウム真理教犯罪被害者支援機構)から、「事件の賠償のために、現在は被害者団体が所有している宗教法人オウム真理教の著作物を、教団(アレフ)が使用しないように」という訴えを受け、東京地裁で調停中です。

 被害者団体は、オウム真理教で用いられた書籍・ビデオ・絵画・音楽などの著作物はすべて、基本的に、教祖も信者も、宗教法人オウム真理教のために製作したものであり、宗教法人オウム真理教が著作権である(法人著作権)と主張していると思われます。

 妻・麗華氏・アレフが、妻の絵画使用料を主張するのは、被害者団体から見れば、本来は、オウム真理教の著作物であり、被害者団体の所有物であるものに対して、そうではなく、妻の著作物であると主張して、被害者団体に対抗する意味を持っていると解釈することができます。

以上です。

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