麻原三女『止まった時計』の虚偽⑥ まとめ:三女が虚偽を述べる理由、疑い、問題、評価ほか
2015年05月12日
麻原三女・松本麗華氏著『止まった時計』における虚偽の内容と関連する事項について、前回の記事麻原三女『止まった時計』の虚偽⑤ 補足:2014年前後からの教団への関与の続きで、まとめの記事として、この記事で最後になります。1 三女が教団への関与や自分の主導性を否定する原因・理由について
これまで①~⑤で述べたとおり、こうして、三女には、自ら主導して、教団に積極的に関与し、裏から支配してきた事実があり、その証拠となる多くの証言があります。
しかし、その事実を無理に隠したり、上祐や母(麻原の妻)といった他人を、主導者として責任を転化しています。
その原因・理由はなんでしょうか?
推察してみると以下の通りとなります。
(1)三女の主観では、嘘をついていないつもりである可能性
まず、何らかの理由で、三女の主観では、その著作の通りの事実認識なのかもしれない可能性を考えてみたいと思います。
というのは、実際に、そういうタイプの人は、世の中にいることが知られています。
その典型的な事例が、他でもない三女の父親です。傍から見れば、陰謀説やハルマゲドン予言といった虚構の教義で、信者を騙しましたように見えるのでしょう が、事情をよく知る私たち弟子だった者たちから見れば、本人こそ、それを本当に信じていたと感じます。そして、カルト教団の教祖は、「本人が自分自身を一 番強く信じており、それに信者が巻き込まれる」というのが専門家の通説です。
麻原のような人物は、心理学的には、「空想虚言症」と呼ば れています。強いカリスマ性を持ち、虚言を弄して人を扇動しますが、その虚言を本人も信じており、そのための後に自滅的に崩壊していくタイプです。ヒト ラー、麻原、カリオストロなどが、その例として挙がっています。
ただし、これは単なる一般論であって、何かの証拠があって、三女が、このタイプであると主張しているのではありませんし、実際に、そうだともなかなか思えません。
(2)そもそもが事実の記載ではなく、主観的な感情・心情の吐露なのか
またより単純に、この著作自体が、客観的な事実に基づいたものではなく、三女個人の手記として、三女が主張したいことを述べたということかもしれません。
皆さんの身の回りにもいると思いますが、客観的な事実ではなく、自分の感情・心情を言うことが優先してしまうタイプの人たちです。
実は、麻原の四女が匿名で手記を出した際にも、このようなことがありました。
その四女の著作の記述の中で、上祐や江川昭子氏に関する記載に誤りがありました。
その際に、出版した徳間書店に問い合わせた際には、記載された事実の裏取りはしておらず、「(四女の)自伝的な色合いの濃いもの」だという返答が書面で送られてきました。
同様に、三女の著作を出版した講談社も、その事実の裏取りなどは全くしていないと思います。そして、徳間書店と同じように、これは、個人の主観的な手記であるという言い訳をするかもしれません。
実際に、三女の著作の前書きには、
「わたしは、この本をノンフィクションとして書きました。原稿を書く際には、事実の裏付けを取りましたが、「こういうことがあった」という記憶があっても、裏付けが取れないこともありました。そのため、記憶を元に書いた部分もあることをあらかじめお断りしておきます。」という記載があります。
これは三女が自ら入れたのか、それとも出版社(講談社)が入れさせたのかわかりませんが、わざわざ「ノンフィクションとして書きました」「裏付けが取れないことがありました」という表現自体が不思議な表現です。
これは、後で記載内容が事実に反することが分かっても、「自分の記憶ではこうだった」と主張するための予防線でしょうか。
実際に、「裏付けを取りました」と言っても、少なくとも私たちが知る範囲では、三女ないし出版社が、団体の(元)関係者に裏付けを取った事実はありません。
この部分は、例によって、出版社が、自分ための逃げ口上として用意したもののようにも感じます。
事実の確認を重視せずに、フィクションの中の物語のように、善玉と悪玉を設定したり、悲劇のヒロインが登場するストーリーを展開すれば、面白い読み物には なるでしょう。しかし、それは出版社の商業主義的な発想によるものに過ぎず、実在する人物や団体に関する虚偽の記載が与える悪影響は甚大です。
読者の中に、この著作の記載を物語ではなく事実と誤解する人がいることは確実であり、記載の対象となっている元幹部信者や現アレフ信者の名誉を毀損する部分があることは間違いなく、それが故に、そうした言い訳では済まされません。
よって、まず、このHPで真実を明らかにしたうえで、その後の対処を考えざるを得ないと思います。
一番気になるのは、今現在、アレフ教団の中で、この三女の著作での主張に反発してのことでしょうが、荒木広報部長などが、それを否定する会合を行っている という情報があります。そのため、この著作は、一時的には三女の立場をよくするかのように見えて、長期的には、麻原の妻やアレフの体制派のメンバーの反発 を買うために、逆に三女に不利益をもたらすのではと心配します。そうなった場合は、出版社にも責任があると言わざるを得ません。三女を役職員として認定し た公安調査庁の反発もあるでしょう。
(3)法的な責任を問われる可能性を回避したいのか
さて、こうした見方とは全く別の見方があります。
それは、三女が、教団への関与や自分の主導性を否定するのは、法的な責任の追及の回避があるという見方です。
言い換えれば、「教団への関与を認めてしまうと、自らに法的な責任が及ぶ恐れがある」ということです。
それは、公安調査庁が、「教団に関与していない」という三女の主張に信用性がないとする根拠の一つでもあります。
具体的に言えば、かつて、三女は、教団に関係しているとして、和光学園に入学を拒否されたことがありますが、それを不当として損害賠償請求訴訟を起こした ことがあります。そして、その裁判の中でも三女は、「教団に関与していない」と主張をしましたが、それは上祐らを外すために、激しく教団に関与している 真っ最中のことだったのです。
そして、話はこれで終わりではありません。
というのは、三女の教団関与を知ることがなかった東京地裁は、2006年に、三女の請求を認め、三女勝訴の判決を出しています。すなわち、「虚偽の証言をし、損害賠償金を受け取った結果」になっているのです。
さらに重要なことは、この当時から、仮に、三女ら家族が、実際には教団に関与しているのにもかかわらず、裁判で虚偽の主張をし、損害賠償金を得たとすれば、違法行為(詐欺容疑)に当たる疑いがあるという見方が、警視庁の中で浮上したことです。
私たちは当時の警視庁幹部から直接聞いています。
そして、上祐の著書(『オウム事件17年目の告白』)にもある通り、2006年に、上祐代表は、当時から三女や麻原の妻に近かった荒木浩広報部長に対し て、いよいよ三女や麻原の妻ら家族と完全にたもとを分かつ(=脱会する)理由の一つとして、この違法行為の疑いの問題を指摘した上で、同部長に、この危惧 を三女や麻原の妻ら家族に伝えるように要請しています。
さらに、2006年には、三女ら家族は、別件で警視庁の捜索も受けています。
こうしたことを考えれば、三女が教団への関与を否定しているのは、こうした法的な責任が追及される可能性を回避するためではないかとも思われます。
場合によっては、学校から賠償金の返還を請求される可能性もあるかもしれません。
しかし、三女が、その著作で述べているように、今後社会に融和するつもりであれば、今後は、速やかに真実を述べることが求められると思います。
実際に、本件の立件を警察当局は見送っています。そもそも、公立ではなく私学であったとしても、家族が教団に一定の関与しているからといって、学校が家族の入学を拒否することは、人道的な立場からは疑問を持つ人もいるでしょう。
さらに、2006年までの詐欺行為であるならば、既に時効が成立していることになります(偽証や詐欺は7年が時効)。
ただし、未確認ですが、家族は、三女以外にも、次男の件で、同様の裁判を提起したという情報もあります。その裁判提起に対して、当時は次男を育てていた三女らが関与している場合は、時効は未成立かもしれません。
他の法的な責任追及の可能性もあります。
例えば、アレフは、陰謀論を使った詐欺的・洗脳的な教化を行ってきました。こうした行為が違法と認定される状況になれば、麻原の妻に加えて、公安調査庁が三女をアレフの意思決定に関わる役職員であると認定したことは、三女には重大な事態を意味します。
なぜならば、自分が直接に、その行為に関与していなくても、教団トップの一人として責任を追及されかねないからです。
4 三女が、麻原の事件への関与を認めていないことに関して
私たちは、三女が、麻原の事件への関与を確信しつつ、それを公には認めていないと考えています。
三女は、まだアレフに在籍していた頃の上祐には、「麻原の事件関与を認める主旨の発言」を繰り返ししていました。
また、三女は、オウムの教義において、「麻原が絶対的で、その意思がなければ、弟子が殺人などを犯すことができない」ことを熟知しているはずです。何より も、麻原はおろか、自分に対してさえ、その意志に反して、信者が、重大な物事を行うことはできないことを自らの経験から熟知しているはずです。
よって、三女が麻原の関与を認めない理由として、娘としての父親への感情もあるかもしれませんが、そこには、麻原への帰依心を含んだものという疑いが生じ ます。というのは、麻原は、1997年の裁判での不規則発言において、弟子が事件を起こしたという主旨の証言をしています。
そして、麻原の教えでは、麻原への絶対的な帰依として、弟子はグルと同じように語るべきであるというものがあります。少なくとも形の上では、三女の言動は、ちょうどこれに当たることになります。
一方、陰謀説を唱えているアレフの主流派は、弟子の関与を認めた麻原の裁判での不規則発言の証言ではなく、逮捕される以前の麻原の言動(=陰謀説)を帰依の対象としていると解釈できます。
すなわち、三女とアレフ主流派の間では、「帰依の在り方の解釈」が異なるということです。
こうした帰依の疑惑を解消し、純粋な父親への愛情であることを証明するには、やはり事実に基づいて、父親の事件関与を潔く認め、父親に代わって謝罪した方 が良いと思います。その方が、彼女にとっても、彼女がその死刑に反対する父親のためにも、よりよい理解を得られるのではないでしょうか。
5 三女の著作全体の評価について:前向きな内容も少なくないこと
これまで三女の『止まった時計』(講談社)の虚偽の記載を含めた、問題点を述べてきましたが、これは、その全ての価値を否定するものでは決してなく、以下の点については評価できると思います。
(1)アレフ信者を、妄想・幻影の束縛から解放する一面がある
第一に、三女は、麻原によって救世主と位置づけられ、信者に絶対的に近い存在という妄想を与えられていましたが、三女の著作は、実際には自殺未遂を犯すなど、全く普通の人間の一人であることを公に認め、信者を幻想の呪縛から解放する一面があることです。
実際に、「三女の著作を読んで、前から抱いていた麻原・教団への疑問が決定的となって、アレフを脱会したい」という相談が、アレフの脱会支援活動をしてい るひかりの輪にも来ています(そのため、アレフの体制派は、「三女の著作を読むべきではない」という指示を出す可能性がありますが)。
(2)将来において麻原の関与を認める可能性も示している
第二に、「オウム事件は陰謀」と主張しているアレフ体制派と比較すれば、三女は、麻原の関与は以前としては認めていないものの、「弟子達の関与」は認めており、謝罪していることです。
仮にそれが、三女なりの麻原への帰依の在り方の解釈だとしても、麻原・オウム真理教の最大の問題の一つが誇大妄想と被害妄想であり、相対的であっても、よ り現実的な見方を持つことは、将来において、麻原の関与を含め、全面的な関与を認めるに至る可能性を示していると思います。
なお、上祐の著作(『オウム事件17年目の告白』)にある通り、2003年前後においても、三女と麻原の妻を比較すると、三女の方がより現実的な感覚を有していました。
今回の両者の対立は、既に10年前から存在していた両者の性格・考えかの違いがついに表面化したものと考えることができます。これは、今後とも拡大していくと思います。
(3)上祐が「麻原隠し」をしているという公安調査庁の主張と異なり、「上祐に麻原信仰がないと考え排除した」という事実が述べられている
第三に、三女が、上祐代表が、アレフを脱会する以前から、麻原に対する信仰がないのではないかと考え、上祐らを排除したという主旨のことを述べていること です。これは、公安調査庁が、明白な証拠もなく、断片的な情報を組み合わせて、上祐代表らひかりの輪が、麻原への信仰を隠した、麻原隠しをしているという 主張をしていることと、明らかに矛盾する事実です。ひかりの輪は、繰り返し要請していますが、公安調査庁は、虚心坦懐、自らの主張を再検討するべきだと思 います。
(4)公に、真偽を監視される立場になったこと
第四に、三女の著作の記載や言動に多くの虚偽や問題があったとしても、三女が、メディアで、公に、「教団には関与せず、社会に復帰したい」と宣言したことは、多くの人々によって、その真偽を監視されることになります。
それは彼女の今後の行動を、良い意味で拘束するでしょうし、段階的にではあっても、その言動を表裏を和らげていくなどの改善が生じることが期待されます。
なお、一部の事情を知らない一般の方から、「上祐代表らが三女と話し合えば良い」といった意見がありましたが、ひかりの輪のスタッフは、三女ら家族とは、10年以上、関係を断絶しています。
今後、三女らが、麻原の事件関与を率直に認め、信者が陰謀論の主張をやめるような方向で、ひかりの輪や元オウム幹部の野田氏などと、アレフ信者の脱会支援などにおいて協力ができればよいとは思いますが、現段階では、なかなか現実的ではないようです。
ともかく、あくまでも以前の三女との比較ではありますが、この著作は、一歩前進という前向きな意味合いがあると思います(そのように信じて期待したいと思います)。
以上で終わります。
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