アレフによる著作権問題の経緯と現状について
現在アレフが、オウム事件の被害者団体(オウム真理教犯罪被害者支援機構)が著作権を有するオウム真理教の著作物を無断で複製、頒布、販売している著作権問題があることは、これまで当団体でも指摘してきました。
今回は、このアレフの著作権問題の経緯と現状について、当団体の取り組みも含めて、さらに詳細にお伝えしたいと思います。
第1,ひかりの輪は著作権侵害をしていないこと
アレフの問題点を指摘する前に、まず、当団体(ひかりの輪)が現在も過去にも被害者団体の著作権を侵害した事実がないことを、以下の通りご説明します。
1,当団体の主要メンバーは、2007年3月にアレフを脱会し、5月に当団体を発足させましたが、この脱会以降、団体活動の中で、オウム真理教の著作物を複製、頒布、販売したことは一切なく、著作権侵害をしたことはありません。
2,それだけでなく、このアレフ脱会以前に複製、頒布、販売したオウム真理教の著作物についても、次のように破棄作業を進め、団体活動の中では一切使用していません。
(1)具体的には、アレフ脱会から当団体発足前後までに、団体の施設において、オウム真理教の教材を一切破棄し、
(2)上祐代表らの専従スタッフ(いわゆる出家者)は、個人所有のオウム真理教の著作物も一切破棄する作業を進めました。大量の荷物の中の大量の教材を破棄する作業であったため、当初は破棄漏れが見つかることもありましたが、現在までに完全に破棄されており、それは公安調査庁も確認しています(詳細は「オウム教材の破棄」をご覧下さい)。
(3)一般会員(いわゆる在家会員)の中で、以前オウム真理教またはアレフに所属し、オウム真理教の教材を自宅に持つ者については、団体を挙げて、その破棄を奨励してきました。個人の財産権の関係上、破棄を強制はできないものの、相当な実績をあげてきました。
(4)なお、当団体では、観察処分の審議や裁判等の法的手続、オウム時代の総括作業、そして今回のアレフの著作権侵害問題に関する被害者団体への協力のための資料として、オウム真理教の著作物を一式、厳重に保管しています。それは、公安調査庁にも報告し、確認を受けていますが、上記目的以外の当団体の日常活動においては全く使用されていません。
3,また、当団体のメンバーは、2007年にアレフを脱会する以前においても、著作権を侵害したことはありません。というのも、当時は、著作権を有していたオウム真理教破産管財人(故・阿部三郎弁護士)との間で、被害者賠償契約を結び(2000年締結)、オウム真理教の教材(殺人を肯定する一部の教えを除く)を使って布教活動を行い、その収益で賠償をする承認を得ていたからでした。
4,なお、当団体は、2011年12月に被害者支援機構から、アレフの著作権侵害の問題があることを聞き、それ以降、この問題について、HPやメディアで一般に広く告発するとともに、その解決のために、当局関係者を含めた関係者に協力してきました。
第2,アレフは、現在、著作権問題があること
次に、アレフの著作権問題の経緯と現状について記します。
1,オウム真理教破産管財人(故・阿部弁護士)は2008年に破産業務(被害者への賠償金の支払い)を終了させ、翌2009年に、オウム真理教犯罪被害者支援機構に、その業務を引き継ぎました。そこで、阿部弁護士や被害者支援機構は、2008年以来、アレフに対して新たな被害者賠償契約の締結を繰り返し求めたにもかかわらず、アレフは不当にも、それを拒否し続けました。さらに、以前の賠償契約の履行をも停止しました。
なお、当団体は、2008年から、新たな賠償契約締結に向けた交渉に入り、2009年7月に、被害者支援機構との間に正式に賠償契約を締結しました。そして、契約に従って賠償を履行し、現在に至っています。
2,被害者支援機構によれば、アレフは、2008年当初は、被害者支援機構との間で賠償契約の締結交渉に応じていました。しかし、同年後半のある段階から突然態度が豹変し、交渉のテーブルにつくことを拒否するようになりました。当団体は、2009年11月、こうした事情を、被害者支援機構からお聞きするとともに、アレフの賠償拒否姿勢の背景に何があると推察されるかについて、同機構から意見を求められ、回答しました。
3,賠償拒否の理由について、アレフは公式には、被害者支援機構が新たな当事者であるか否かが不明だからという趣旨のことを述べていますが、それは単なる言いがかりにすぎません。
第一に、被害者支援機構は、正式な手続を通じて、法的に賠償の当事者となっています。
第二に、同機構の中村裕二弁護士によれば、中村弁護士が住民集会の場でアレフの賠償について行った発言について、アレフは同弁護士に謝罪を求めており、謝罪しない限り賠償交渉に応じないと言い続けてきた事実があるのです。そもそも、被害者側に謝罪を求めたりするのが、加害者側のとるべき姿勢ではないのは当然ですが、こうしたことからも、アレフの挙げる賠償拒否の理由は、単なる言いがかりにすぎないことが明らかです。
4,こうしてアレフは、賠償拒否の姿勢に転じた2008年から2009年以降に、著作権問題が生じ始めたと解釈することができます。
というのも、2000年の賠償契約の段階で、オウム真理教の教材を使用する活動をすることについて当時の著作権者である故・阿部弁護士から得た承認は、上記の通り、2009年までに、
①アレフが賠償契約の履行を停止し、新たな賠償契約締結を拒否し始めたこと、
②著作権者が故・阿部弁護士から、被害者支援機構(理事長:宇都宮健児弁護士)に代わる中で、同機構はアレフによるオウム真理教の著作物の使用を認めていないこと、
から、その効力を失うと判断されるからです。
5,その後、2011年7月には、著作権者である被害者機構が、アレフに対して、著作権の侵害をしないように正式に文書で通知しましたが、それに対して、アレフはまったく応じていません。現に、アレフの各支部道場で、著作権問題が継続していることが、例えば、アレフのHPの記載や、アレフに疑問を感じ当団体に脱会相談をしにきた多くのアレフ信者の情報から確認されています。
6,さらに、2012年6月には、麻原・オウム真理教の著作物を丸写しした内容の『チャクラとクンダリニー』という書籍を、アレフの出家信者を発行人とする出版会社から刊行し、著作権問題の脱法行為を意図したとも思われる行動をとっています。
以上の通り、アレフは明らかにオウム真理教犯罪被害者支援機構の著作権に対する問題を有しており、現に同機構からアレフに対して、裁判所を介しての法的手続が始められています。当団体は、一刻も早く、アレフが同支援機構からの要求に応じて、オウム真理教の著作物の無断複製・頒布・販売を停止し、著作権に対する問題をなくすように強く求めます。
本日、11月22日~23日(祭日)、札幌にてアレフ脱却のご相談をお受けします。(23日は上祐の勉強会あり)
◎スケジュール
11月22日(終日)上祐代表との個人的な面会(適宜お受け付け)
11月23日(12:00から) 上祐代表の勉強会(ヒーリング等の無料実践会もあり)
◎札幌でのアレフ脱却支援のご相談受付
出張期間中に、アレフ(旧オウム真理教)の脱却支援を受付しております。
札幌は、アレフ(旧オウム真理教)洗脳的勧誘活動が、全国で最も突出している地域であり、その被害を受けた方からのわたしたちへのご相談が続いています。
ご家族が入信してしまったなど複数の方の深刻なご相談があり、できる限りの脱却支援をさせていただいた結果、多数、脱却に成功したケースがあります。
(念のため申し添えますが、ひかりの輪に入会しなければならないということはありませんので、ご安心してご相談くださいませ。)
◎上祐代表勉強会
また、13日には、勉強会を開いています。
勉強会の場所は、JR札幌駅から歩いて数分のところで、皆様がお越しになるにはとても便利なところで行います。
上祐代表の勉強会は、昨年の11月から行なっていますが、毎回、一般の方には大変好評をいただいています。
勉強会終了後には、大変リラックス効果が高いヒーリングの無料実践会なども行なっています。
ストレス解消には抜群の効果があります。心もリフレッシュしますよ。
一度経験されてみてはいかがでしょうか?
代表の勉強会終了後は、希望される方のために、上祐代表との個人的な面談のお時間も設定しています。
この個人面談も、一般の方に好評をいただいています。
ご関心がおありになる方は、一度参加されてみてはいかがでしょうか?
みなさまのお越しをお待ちしています。
なお、23日の代表勉強会の日がご都合の悪い方は、前日の22日(木)にも、個別に、上祐代表との面談を設定していますのでお気軽にお問い合わせください。
◎お問い合わせ先
詳しいお問い合わせは、以下の担当までお願いいたします。
担当:吉田恵子
連絡先:080-6583-5869
sendai@hikarinowa.net
ひかりの輪の賠償の経緯と現状について
1,賠償契約の締結と実際のお支払い状況
(1)ひかりの輪の賠償契約の締結の経緯
①発足から2009年6月まで:正式契約なしの状態で
ひかりの輪は、アレフ(旧オウム真理教)を2007年3月に集団脱会したメンバーが中心となって、2007年5月に発足しました。それ以来、オウム事件の被害者やご遺族(以下「被害者」と記します)の方に対して、賠償金のお支払いを行ってきました。
ただし、発足から2009年6月までの賠償金のお支払いは、ひかりの輪のメンバーがアレフに所属していた2000年7月6日にアレフが締結した賠償契約に基づいて行っていました。それは、ひかりの輪としての正式な賠償契約がない中で、アレフを脱会した後も、オウム真理教の過ちを二度と繰り返さない証として行ったものです。
なお、この2000年にアレフが締結した賠償契約とは、宗教法人オウム真理教が一連の事件の賠償債務のために破産した後に、その残存資産を管理して賠償金の支払いを行っていた破産財団オウム真理教の破産管財人(阿部三郎弁護士)との間で締結されたものでした(その契約の内容は「アレフが、被害者賠償契約の締結を拒否している事態について」の「※資料②」を参照のこと)。
②2009年7月~今日まで:正式契約を締結して
その後、2009年7月6日、ひかりの輪として、正式に賠償契約を締結しました。この賠償契約は、先ほどの破産財団オウム真理教が諸事情によって解散となり、その賠償金支払いをオウム真理教犯罪被害者支援機構(以下、被害者支援機構)に引き継いだために、同被害者支援機構と締結したものです。
この点に関する詳細は、「新しい被害者賠償契約締結のご報告」に掲示しております。
この契約によって、ひかりの輪は、①オウム事件の賠償債務の残り全額を引き受け、②定期的に被害者支援機構に財務報告を行う義務を負いました。
ただし、毎年の支払い義務については、被害者支援機構との話し合いの中で、団体の現実の支払能力をふまえ、初年度(2009年)の年間の最低支払義務は300万円、努力目標が800万円と設定していただきました。
なお、契約では、団体の財務状態に応じて、最低義務と努力目標を毎年改めて設定することとしておりますが、2009年以来、2012年までは、財務報告をしながら、結果として、同じ数字(300万~800万円)で行わさせていただいております。
(2)ひかりの輪の賠償金支払いの概要
契約締結の2009年以来、近年の厳しい財務状況の中で、被害者支援機構に定期的な経済報告をしながら、何とか最低義務の300万円の支払義務を履行させていただいております。以下、発足以来の賠償金の具体的な支払い状況です。
2007年
6月13日 200万円
9月26日 200万円
合計 400万円
2008年
3月20日 200万円
7月9日 200万円
10月2日 200万円
12月26日 200万円
合計 800万円
2009年
4月14日 100万円
5月7日 40万円
7月8日 60万円
10月2日 50万円
12月6日 50万円
合計 300万円
2010年
3月17日 75万円
6月30日 58万7961円
8月4日 17万円
8月30日 50万円
10月12日 50万円
(2011年)1月1日 50万円(2010年度分として)
合計 300万7961円
2011年
5月28日 13万3500円
6月30日 12万2593円
7月20日 75万円
9月6日 50万円
10月7日 75万円
11月11日 75万円
合計 300万6093円
2012年
3月9日 75万円
6月13日 75万円
9月27日 80万円
12月支払い予定
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総計 2331万4054円
2,賠償金のお支払いが最低義務の300万円台に留まっている理由
(1)最低義務300万円と努力目標800万円を設定した背景
最低義務と努力目標を設定した背景は、契約締結の前年の2008年度は、800万円の賠償金を支払ったものの、契約年の2009年において、下記の大きな財務事情の悪化要因のため、お支払いできる額が、300万円以内との見通しとなったためです。
そして、2009年以来、財務状態は目立って改善することはなく、2012年まで、同じ設定にしていただきました。そして、実際の毎年のお支払額も、上記の通り最低義務の300万円台となりました。
その大きな事情の変化とは、以下の通りです。
①専従会員の国民年金の支払い
ひかりの輪では、2008年度までは、専従会員(※団体施設に居住し、団体業務に専念するスタッフ。出家者)の国民年金保険料の納入を後回しにし、賠償金の支払いを行ってきました。しかし、2009年からは、それを取りやめたため、その分、年間経費が数百万円分、大幅に増大しました。
これは、①年金保険料の未納が社会問題となったこと、②そもそも支払いが法に定められた国民の義務であること、③オウム時代に出家したために、私有財産を有しない専従会員の最低限の将来の生活保障を図る必要があること、などのためでした。
②専従会員の減少(発足以来半減)
ひかりの輪の収入源は、専従会員による各支部教室の運営や、一般の外部就労によりますが、専従会員の数は、契約前年の2008年には55名いたところ、契約年の2009年を経て、2012年現在までに、27名に半減しています。
これは、アレフ(旧オウム)を脱会し、ひかりの輪になった結果として、思想・団体のあり方が大きく変化したことなどが原因だと思われますが、これによって、この期間の中で、団体の収入も半減しました(正確には半減以上に悪化しました)。
それに加え、財務状態が厳しい団体の中にいれば、将来の生活が不安だと感じて、脱会した者も少なくありません。よって、①で述べたように、国民年金の支払いなどを含め、専従会員に最低限の将来の生活保障を行うことは、賠償金のお支払いを長期的に安定的に行うためには必要だと判断しました。
③不況の影響による収入の減少
契約年の2009年は、その前年(2008年)後半に発生したリーマンショックによる世界的な不況による影響が見られ始め、専従会員と非専従会員(一般の在家会員)の双方の収入が減少し、そのため、団体の収益も悪化しました。
これに加え、昨年2011年に発生した東日本大震災では、団体の仙台支部が被災するなどして、その影響を受け、一時的にですが、団体の収入が低下したことがありました。
こうした状況の中で、ひかりの輪では、最大限の経費節減や、可能な限りの収入の確保に励みながら、先ほど述べた300万円台のお支払いを何とか実現してまいりましたが、その結果として、団体の総資産は下記の通り、減少し続けているという厳しい状態が続いております。
※団体発足(2007年5月)以来の現金・預貯金資産の推移
2007年 5月 2681万6077円
2008年 5月 2129万2305円
2009年 5月 2181万4302円
2010年 5月 1811万2882円
2011年11月 1631万3661円
なお、毎年300万円の賠償金のお支払いと団体資産の減少は、公安調査庁公表のデータ(平成24年1月の「内外情勢の回顧と展望」)からも、ほぼ同じ状況が確認できます(ただし、公安調査庁のデータは、一部不正確な部分あります)。
また、ひかりの輪では、こうした団体の財務状態について、契約に基づき、オウム真理教犯罪被害者支援機構に対して、定期的に文書で会計報告を行っており、毎月の収入・支出の額を詳細に報告しています(2009年4月、2011年7月、2012年1月、2012年8月に文書報告)。
3,今後の賠償支払いの改善努力
こうして、様々な条件の下で、団体の財務状態が、なかなか上向かない中でありますが、今後の改善努力としては、
①経済全般が厳しい中で、なるべく経費の節減に努め、収益の改善を図ること
②上祐代表などの団体の幹部が、オウム真理教時代の反省・総括を著す書籍を発刊し、その印税収入を賠償資金に回すこと
などを行い、少しでも多くの賠償金がお支払いできるよう努力してまいります。
4,よくある質問・疑問・誤解へのご回答
(1)被害者は、賠償ではなく、解散を求めているのではないか?
――被害者側の総合的な判断に基づいて賠償の推進に努めています
被害者の方のお考えについて、団体は直接的な接触が不可能なため、賠償を担当されている弁護士の先生に、その理解ととりまとめをお任せしてきました。
賠償契約は、アレフ時代の2000年に初めて締結しましたが、その経緯は、当時、被害者の方への賠償を担当されていた破産財団オウム真理教の破産管財人(阿部三郎弁護士)が、アレフ側に対して、破産管財人との間で賠償契約を締結することを提案してこられたことから始まります。破産管財人は弁護士の阿部三郎氏で、日弁連の会長も務めた人望の厚い方であり、その結果、アレフは同年7月6日に、賠償契約を締結しました。
その締結には、多少の時間を要しました。その理由は、アレフ教団内で話し合う必要があった一方、被害者の中にはアレフ解散を求めて賠償契約に反対する方々もいて、阿部氏が調整を図る必要があったからだと推察しています。
しかし、最終的には、破産管財人は、賠償契約の締結を決断されました。後日、その経緯を、管財人からお聴きしますと、「被害者の中には解散を求める意見も強いが、信教の自由もあるし、まずは最大限、賠償金を支払わせるのが先決だという方もいて、一様ではない中で、自分が決断した」とのことでした。
また、破産管財人による賠償業務が終了した後に、賠償業務を引き継いだオウム真理教犯罪被害者支援機構の理事である被害者関係の弁護士の方からも、「団体の解散を求める声は根強いが、賠償金は喉から手が出るほど欲しいという人たちもいる」とお聞きしました。
このような状況の中で、総合的な判断をし、破産管財人も、被害者支援機構も、団体と賠償契約を締結したというのが、私達の基本的な理解です。
この点について、マスコミなとで一部の被害者の方が、解散を求める趣旨のご発言をされていることは承知しておりますが、心情的には、そのような方が多くいらっしゃることを十分に踏まえつつ、結論としては、総合判断に基づいて賠償を進めていくことが基本だと考えています。
(2)思想・哲学の学習教室活動ではなく、一般の就労で賠償はできないのか(増えないのか)?
――思想・哲学の学習教室関連の事業なしでは、賠償は現実として不可能です
まず、ひかりの輪は、宗教的な学習はしますが、何者かを絶対視するいわゆる宗教(団体)ではありません。新しい知恵の学びの場、スピリチュアルアカデミーです。
次に、こうした思想・哲学の学習教室関連の事業を止めて、一般の会社に就労した場合は、結論から言えば、賠償は大幅に減少するか、皆無に近くなるといわざるをえません。
詳しく説明しますと、まず、ひかりの輪の専従会員は、27名前後です。前に述べたように、アレフ(旧オウム)から脱会して、思想が抜本的に変わる中で、専従会員は半減し、その中には、うつ病になる者も出ました。
団体の平均年齢は50才を越えており、27人の中で、60代から80代までの高齢者が7人(認知症・要介護の人や視聴覚の障害者を含む)です。また、精神疾患の者が2人、他の病気療養中が1人で、10人が高齢者もしくは病人です。この大半は、団体による生活扶助を必要としています。
そして、外部で一般の会社に就労している者が8人前後、内部で団体の活動に従事している者が13名前後となっています。
まず、外部に就労している者ですが、すでに高齢でありながら、長らくオウム真理教に出家していたために、仕事のキャリア・技能がなく、高収入は全く期待できません。派遣・フリーターなど、その立場も不安定です。
よって、団体の賠償金のお支払いは、団体の思想・哲学の学習教室関連の活動に従事している者が得る収益から主に支払っています。
彼らは、仏教的な思想の学習の手伝い、ヨーガ・気功法の指導、個人相談、聖地巡りの案内、団体のホームページや広報活動、事務経理などを担当し、東京の本部を中心に、全国8支部教室に居住しています。
なお、彼らは、信者をオウム真理教のような盲信に導き、多額のお布施をとるのではなく、地道な日々の指導・奉仕によって、収益を得ています。
また、団体は、一般会員(在家会員)を含めても会員総数は180人ですが、一般会員は、専従会員にとっては、奉仕によって収益を得る対象であり、一般の企業にとっては、一面において顧客のような立場でもありますから、賠償金支払いのために、生活の全てを犠牲にすることを求めることはできません。
(3)解散して個々人が賠償できないのか?
――解散すれば賠償は皆無となり、さらに生活保護受給もありえます
解散して、個々人がバラバラになった場合は、賠償の能力と動機の双方が著しく減少し、賠償が皆無になり、逆に一部の者が、生活保護の受給に陥る恐れがあります。
その理由は、①個人となった場合、収入が減り、経費が増大し、生活がより厳しくなること、②個々人には、賠償の法的な責任がないことなどです。
まず、①についてですが、個々人がバラバラとなると、高齢で仕事のキャリア・技能のない多くの者は、団体の活動に従事する場合に得ていた収益よりも、収入が減少します。逆に、経費の方は、集団で居住する場合に可能な様々な経費の節減が不可能となって増大します。そのため、自分が生きていくので精一杯となり、現在のように賠償までは、力が及ばなくなる恐れが高いと思います。
また、賠償ができないことはおろか、生活保護の受給となる者が、少なからず発生すると思われます。実際に、団体は発足以来、30名ほどの者が出家をやめましたが、その中で、少なくとも、4名が生活保護を受給していることを確認しています。いずれも60代の高齢者や、精神疾患者などです。
ただし、これは30名全体を調査した結果ではなく、全体を調査すれば、さらに多くなる可能性もあり、さらに、今後加齢とともに、それが増大する可能性もあります。こうして、解散したならば、賠償が皆無に近くなる恐れがあるだけでなく、逆に社会・国家に経済的な負担をかける結果となる可能性があります。
第二に、解散した後の個人には、賠償する法的な責任がなくなります。基本的に、賠償責任は団体が負っており、個人が負ってはいません。
麻原のような犯行者には、個人の賠償責任はありますが、(元)信者個人にはありません。これは、事件発生以来、オウム真理教をすでに脱会している数万人の人々に、法的な賠償責任が全くないのと同じです。
実際に、多くの元信者から被害者団体になされた寄付は、ひかりの輪やアレフが支払った金額に、遠く及びません。2つの団体が支払った賠償金(ないし寄付金)は2000年以来、8億円を超えていますが、被害者団体の弁護士の方によると、オウム真理教の脱会者を含めた一般人による寄付金は1億円に満たないのが現実です。
これは、脱会した後には、賠償する法的責任がないことに加え、先ほど説明した通り、経済的な困難を抱えることなどが原因の場合もあると思います。ただ、全ての脱会者がそうではないでしょうから、法的責任がないことが、彼らによる賠償がわずかなものにとどまっている大きな原因の一つだと思います。
実際に、脱会者については、内面にオウム真理教の信仰を維持していようが(一人オウム・脱会信者)、脱却していようが、世間は、現実としては、賠償の責任を追及することはなく、結果として、過去が免罪されたかのような状況となります。
95年のサリン事件の発生時点で、オウムの位階制度において上位十数名のうち7名(女性4名・男性3名)は、既に受刑を終えるなどして社会復帰していますが、団体に所属し、賠償の法的義務を負っており、賠償の責任を当局・メディアに常に追及されているのは、上祐のみです。アレフを裏から支配している松本知子さえも免れています。
また、それに準ずる中堅幹部の中に関しては、すでに団体を脱会した者の方が、団体に所属している者よりも、5・6倍は多いかと思います。一般信者については95年以来脱会した者が、依然として団体に所属する者よりも、50倍に近いということもできます。こうした脱会した元一般信者はおろか、元中堅幹部も、賠償の責任を追及されることはありません。
そして、彼らの中には、賠償をするどころか、自分も麻原らに騙された被害者という意識を持っている者が、大半だと思います。彼らの中には、最高幹部や中堅幹部として、上祐のように、刑事責任はなくても教団の武装化などを知っていた者もいますが、それは少数であり、報道によって後から知ったのみの人がほとんどです。
逆に、依然として「一人オウム」として信仰を持っている者は、麻原は事件をやっていないと盲信していたり、ないしは事件を正当化していたりしていますから、この場合も、賠償する動機がありません。
これは、事件に対して刑事責任がなくとも、自分達に道義的な責任があると自覚する者が少ないということだと思いますが、逆に言えば、現実に、そうした自覚を求めることは、相当に難しいと思います。
ひかりの輪では、そうした道義的な責任を団体組織を挙げて自覚する努力に努めていますが、解散して個々人がバラバラになった場合は、ひかりの輪の経験者も、他のオウム経験者と同じ、精神的・経済的・法的な環境・条件におかれることになります。
以上が、現実として賠償を進める上では、団体として賠償責任を負うことが、必要であると考える理由ではないかと思います。
第三に、団体側としては、ひかりの輪のメンバーの生活権というものも考慮していただきたいと思うところがあります。
というのは、今から12年以上前の2000年に賠償契約が初めて締結された際に、その契約の中で、賠償のための収益を得るために、教団の合法的な経済活動が認められました。さらに、この契約は、オウムの破産を管理する裁判所にも認可されました。
こうして、団体が賠償を支払うことを条件に存続する点について、団体、被害者側、裁判所(=国権)が正式に合意したという状況があります。
これは、私達の立場から見れば、すでに中年にさしかかった人間の集団が、思想哲学の学習教室の活動による収益があることを前提にして、今後の経済生活の設計を定めるという結果をもたらしました。
その結果、仮にそれ以前に団体が解散となっていれば行っていたであろう一般会社への就労といったキャリアを積むことなく、この12年の間、自分達の経済生活を営んできました。よって、12年後の現在において、この前提を覆して、賠償ではなく、解散を求めることは、メンバーの生活権の問題にも関わってくるのではないでしょうか。
(4)ひかりの輪は、麻原信仰を捨て、新しい団体になったのに、なぜ賠償する責任・必要があるのか?賠償を続けると、逆に麻原信仰を捨てていないと誤解されないか?
――事件の反省と新しい思想・実践の創造のためです。
麻原信仰とその教義・教材の一切を捨てたひかりの輪が、賠償契約を締結したのは、オウム事件を反省し、それを繰り返さず、それを越えた新しい思想・実践を創造しようとする証のためです。
厳密に言えば、賠償責任があるのは、各刑事事件の犯行者と、破産した宗教法人オウム真理教です。
また、宗教法人オウム真理教に加え、その後継団体として、事件の原因となった麻原の教え・教材と麻原を信仰する信者で収益を上げているアレフが賠償することは、現在の収益源が事件と因果関係があるわけですから、理にかなっていると思います。
実際に、その教材の著作権は被害者団体が所有していますから、アレフが嫌がったとしても被害者団体が望むならば、法的手続きによって著作権の支払いという形ではありますが、支払いを義務づけることもできます。現状は、彼らは麻原を絶対視しており、賠償をする動機=麻原の過ちの認識・反省がないため、被害者団体と深い対立状態になっています(後に詳しく述べます)。
一方、ひかりの輪は、そのメンバーが、オウム出身ではあっても、オウムとは違った教えの新しい団体であり、本来は、オウムの事件の被害者賠償を行うことは、自らの意志で賠償契約を締結しない限り法的義務になり得ないとも考えられます。
わかりやすく言えば、オウム出身者複数名が、宗教ではなく、一般の物品・サービスの企業を立ち上げても、その企業が賠償責任を負ったという事例は今までないということと、本来は同じことです。
しかし、世間では、ひかりの輪はオウム真理教と同じだという誤解がありますから、その誤解に基づいて、法的な義務があるという見方が生じます。そして、その誤解が強いために、ひかりの輪が発足する前後、賠償逃れのためにアレフから脱会し、別団体を作るのではないかという批判さえ出ていました。
こうして、私達がオウム時代の反省をしていないと誤解されることは極めて不本意あり、そうではないことの証として、法的な責任の概念を越え、自主的に賠償契約を締結しようと考えました。その結果、2009年に、被害者の支援団体であるオウム真理教犯罪被害者支援機構と賠償契約を正式に締結しました。
5,ダブルバインドの状況と、それに対する地道な解決策
団体の賠償に関して、オウム真理教はひかりの輪の現状に詳しい宗教学者の太田俊寛氏は、以下の通り述べておられます。
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さらにもう一つ留意すべき点は、現在の上祐氏とひかりの輪が、大きな「ジレンマ」を抱え込んでいるということである。そのジレンマとはすなわち、一般社会の側から「オウムはもう見たくない、後継団体はすべて解散してほしい」という要請がある一方、オウム事件に対する説明責任、さらには被害者への賠償を果たし続けるためには、何らかの形で団体を維持する必要があるということである。対談の終盤でも触れられたように、現在のひかりの輪の活動が、こうした数々の厳しい条件を前提として成り立っているものであるということを、私たちは理解する必要があるだろう。(太田出版『atプラス』13号より)
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こうして、賠償が進まないような団体の財務状態の根本的な理由を言えば、賠償を課せられながらも、団体の活動は厳しく監視・批判・制限されるという現在の状況、すなわち、ダブルバインドの状態があると思います。
今後は、この根本原因の解消に向けて、社会一般ならびに当局に対して、団体の正しい理解を求めるべく、様々な努力をしていきたいと思います。
6,アレフの賠償の問題
麻原信仰を深めるアレフは、被害者支援機構と対立状態に入っています。というのも、アレフは、①2000年以来の過去の賠償契約を履行せず、②被害者支援機構が求める賠償契約の更改を拒否し、③多額の収益と資産がありながら、それに比較してわずかな額を、賠償金としてではなく、寄付金として支払うにとどまっているからです。この詳細については、「ひかりの輪とアレフの違い」をご覧下さい。